トーン&マナーと用語集の作り方|AIに渡せる「自社らしさ」の設計書
担当者やAIが変わっても文章の印象がぶれないよう、トーン&マナーと用語集を整えておく方法を解説します。決めるべき項目、作り方の手順、AIへの渡し方まで、そのまま使えるひな形付きで紹介します。
サイトのページを複数の人で書いたり、AIに少しずつ書かせたりしていると、ページによって文章の印象がばらばらになることがあります。トップページは親しみやすい語り口なのに、サービス紹介は硬い説明調、採用ページは急にくだけた口調、といった具合です。読者から見ると、同じ会社のサイトなのに人格が定まらない印象を受けます。
こうしたばらつきを防ぐのが、トーン&マナーと用語集です。トーン&マナーは文章の雰囲気や話し方のルール、用語集は自社で使う言葉の定義と使い分けをまとめたものです。この2つを整えておけば、担当者が変わっても、AIに頼む場合でも、同じ基準で文章を作れます。
この記事では、中小企業でも無理なく作れるトーン&マナーと用語集の作り方と、AIへの渡し方を解説します。送り仮名や数字の書き方などの細かな表記ルールは、別の記事で扱います。
トーン&マナーと用語集の役割
2つの資料は、似ているようで役割が違います。
| 資料 | 決めること | 解決する問題 |
|---|---|---|
| トーン&マナー | 読者との距離感、話し方、避ける表現、人格のイメージ | ページや書き手によって雰囲気がばらつく |
| 用語集 | 自社の商品名・サービス名、業界用語、言い換えのルール | 同じものを違う名前で呼ぶ、専門用語が伝わらない |
どちらも、立派な冊子にする必要はありません。A4用紙1〜2枚程度に収まる分量から始め、運用しながら育てていくほうが、実際に使われる資料になります。
トーン&マナーで決める項目
トーン&マナーでは、次の項目を決めます。抽象的な形容詞だけで終わらせず、例文をつけるのがポイントです。
1. 人格のイメージ
自社のサイトを「一人の人」にたとえると、どんな人物かを言葉にします。例えば「現場を知り尽くした、穏やかで頼れる先輩」のように書くと、書き手がイメージを共有しやすくなります。
2. 読者との距離感
です・ます調か、だ・である調か、敬語の強さはどの程度か、読者を「お客様」「皆さま」「あなた」のどれで呼ぶかを決めます。
3. 「こう書く/こう書かない」の対比
形容詞だけでは解釈が人によって変わるため、具体的な対比で示します。
- 親しみやすく、でもなれなれしくない:「お気軽にご相談ください」は使う。「何でも聞いてくださいね!」は使わない
- 専門的、でも難しくない:専門用語は使ってよいが、初出で一言説明を添える
- 誠実、でも謙遜しすぎない:できることは言い切る。できないことは「対応していません」と明記する
4. 避ける表現
根拠を示せない最上級表現、他社を下げる比較、過度な感嘆符や絵文字など、自社として使わない表現を挙げておきます。
5. ページによる幅
トーン&マナーは、すべてのページをまったく同じ口調にするためのものではありません。採用ページは少しやわらかく、会社概要や規約に近いページは正確さを優先して硬めに、といった幅を持たせてよいでしょう。大切なのは、その幅を事前に決めておくことです。「採用ページでは社員の言葉を引用してよい」「FAQは一問一答で、回答の最初の一文で結論を言う」のように、ページの種類ごとの補足を数行書いておくと、書き手が迷いにくくなります。
用語集の作り方
用語集は、次の手順で作ると効率的です。
- 今ある文章から言葉を集める:サイト、パンフレット、提案書から、商品名、サービス名、業界用語、社内用語を抜き出します。この作業はAIに「以下の文章から固有名詞と専門用語を一覧にしてください」と頼むと早く進みます。
- 同じものを指す言葉をまとめる:例えば「導入支援」「セットアップ」「初期設定サービス」が同じサービスを指していないかを確認します。
- 正式な言葉を1つ決める:まとめたグループごとに、サイトで使う言葉を1つに決め、使わない言葉も併記します。
- 説明文を添える:社外の人に伝わりにくい言葉には、一言の説明を用意します。
- 担当部署に確認する:商品名や制度名は、正式名称を管理している部署に確認します。
用語集は、次のような表形式でまとめておくと使いやすくなります。
| 使う言葉 | 使わない言葉 | 説明・使い方 |
|---|---|---|
| 初期設定サポート | セットアップ、導入支援 | 契約後に行う設定作業の代行。サービス名として使う |
| お客様 | ユーザー、顧客 | サイト上で読者や利用者を指すとき |
| 保守 | メンテ、アフター | 公開後の不具合対応と更新作業。初出で「公開後の保守(不具合対応や更新)」と説明する |
表の内容はあくまで仮の例です。自社の実際の商品名や呼び方に合わせて作ってください。
AIへの渡し方と運用のコツ
トーン&マナーと用語集は、AIに原稿を頼むたびに一緒に渡します。毎回貼り付けるのが手間な場合は、AIサービスによっては、あらかじめ指示を登録しておける機能や、資料を参照させる機能があります。機能の名前や使える範囲はサービスやプランによって異なり、変更されることもあるため、利用中のサービスの公式情報を確認してください。
原稿を頼むときの指示例は次のとおりです。
- 「添付のトーン&マナーと用語集に従って、以下の構成で本文を書いてください。用語集の『使わない言葉』は使わず、『使う言葉』に置き換えてください。トーン&マナーの『こう書かない』例に近い表現になっていないかも確認してください」
すでにある原稿の点検にも使えます。
- 「以下の原稿について、用語集にない専門用語、『使わない言葉』の使用箇所、トーン&マナーに合わない表現を指摘してください」
運用のコツは、編集のたびに気づいたことを追記していくことです。新しい商品が出たとき、AIが繰り返し使う気になる言葉が見つかったとき、読者から「この言葉がわからない」と言われたときが、更新のタイミングです。更新した日付と担当者を資料の冒頭に書いておくと、どれが最新版かで迷いません。もちろん、AIが資料どおりに書いているかどうかは、最終的に人が読んで確認します。
まとめ
トーン&マナーは文章の雰囲気と話し方を、用語集は自社の言葉の定義と使い分けを決める資料です。人格のイメージ、読者との距離感、「こう書く/こう書かない」の対比、避ける表現を決め、用語は今ある文章から集めて正式な言葉を1つに絞ります。どちらも小さく作って、AIへの指示と人の確認の両方に使いながら育てていきましょう。
まずは、自社サイトの主要ページから、同じものを違う言葉で呼んでいる箇所を3つ探してみてください。それを「使う言葉/使わない言葉」の表に書き込むところが、用語集づくりの第一歩になります。