導入事例・お客様の声ページの作り方|捏造しない取材とAI活用の線引き
導入事例やお客様の声は、読者の判断を後押しする大切なページです。AIで架空の声を作らないことを前提に、取材の進め方、掲載許諾、構成の型、AIに任せてよい作業と任せない作業を解説します。
サイトを見た人が問い合わせを決めるとき、大きな後押しになるのが導入事例やお客様の声です。自分と似た立場の人が、どんな課題を抱え、どう解決したのかを知ると、依頼したあとの姿を具体的に想像できるからです。
一方で、事例ページは作るのに手間がかかります。お客様に取材を依頼し、日程を調整し、原稿を確認してもらう必要があるため、つい後回しになりがちです。そこで「AIでそれらしい声を作ればいいのでは」と考える人もいるかもしれませんが、これは絶対に避けるべきです。実在しないお客様の声や、実際とは異なる事例を掲載することは、読者をだますことになり、表示に関するルールに抵触するおそれもあります。
この記事では、事例やお客様の声を「捏造しない」ことを前提に、取材から公開までの進め方と、AIを使ってよい範囲を解説します。
AIに任せてよいこと、任せてはいけないこと
最初に、事例ページにおけるAIの使い方の線引きをはっきりさせておきます。
| 任せてよい作業 | 任せてはいけない作業 |
|---|---|
| 取材の質問項目の案出し | 取材していないお客様の声を作ること |
| 取材の文字起こしの整理、要点の抽出 | 実際の発言にない感想や評価を付け足すこと |
| 確認済みの要点をもとにした原稿の下書き | 効果の数字を推測で補うこと |
| 見出し案、読みやすさの調整 | 複数の声を組み合わせて一人の声に見せること |
| アンケートの自由記述の分類 | 否定的な意見を肯定的に書き換えること |
つまり、AIは「実際に聞いた内容を、読みやすく整える」ために使い、「内容そのものを生み出す」ためには使いません。この線引きを、社内の制作ルールとして明文化しておくと安心です。具体的な法律上の判断については、社内の担当者や専門家に確認してください。
取材から公開までの手順
事例ページは、次の手順で進めます。
- 取材先を選ぶ:読んでほしい見込み客と、業種や規模、抱えていた課題が近いお客様を選びます。
- 依頼と掲載条件の確認をする:掲載するサイトやページ、社名・氏名・写真の掲載可否、公開前に原稿を確認してもらうことを、事前に書面やメールで伝えて了承を得ます。
- 質問を準備する:後述の構成に沿って、質問項目を用意します。
- 取材する:録音の許可を取り、30分〜1時間程度を目安に話を聞きます。
- 原稿を作る:文字起こしから要点を抽出し、構成に沿って原稿にします。
- お客様に確認してもらう:事実関係や表現に問題がないか、取材先に確認してもらい、修正の希望があれば反映します。
- 掲載の最終承認を得て公開する:修正後の最終稿で、掲載の承認をあらためて得ます。
手順2で「公開前に原稿を確認していただく」と伝えておくと、お客様も安心して率直に話してくれやすくなります。
事例ページの構成と質問項目
事例ページは、読者が自分と重ね合わせやすい「課題→選んだ理由→取り組み→変化」の流れが基本です。各パートに対応する質問の例を紹介します。
1. 課題(導入前)
- 「当時、どんなことに困っていましたか」
- 「その状態が続くと、どんな影響がありそうでしたか」
2. 選んだ理由
- 「ほかにどんな方法を検討しましたか」
- 「最終的に決めた理由は何でしたか。不安だった点はありましたか」
3. 取り組みの内容
- 「実際にどのように進めましたか。社内で工夫したことはありますか」
4. 変化(導入後)
- 「導入前と比べて、何が変わりましたか」
- 「数字で確認できる変化はありますか。あれば、掲載してよい範囲で教えてください」
- 「まだ残っている課題や、今後取り組みたいことはありますか」
「不安だった点」や「残っている課題」を聞くのは、良いことだけが並ぶ事例よりも、率直な話が含まれる事例のほうが信頼されやすいからです。数字を載せる場合は、お客様が確認した数字だけを使い、期間や条件を添えて「この事例の場合」であることがわかるように書きます。
AIを使った原稿化と確認のポイント
文字起こしから原稿を作るときは、次のような指示が使えます。
- 「以下は導入事例の取材の文字起こしです。課題、選んだ理由、取り組み、変化の4つの見出しで、取材先の発言だけを根拠に原稿を書いてください。発言にない評価や数字は加えないでください。各段落の根拠となる発言を、末尾に【根拠】として引用してください」
原稿ができたら、次の点を確認します。
- すべての記述が、取材での発言か、お客様が提供した資料に基づいているか
- お客様の言葉として「」で引用した部分が、実際の発言の趣旨と一致しているか
- 効果が誰にでも出るかのような書き方になっていないか
- 掲載の了承を得ていない情報(社名、担当者名、写真、取引条件など)が含まれていないか
- 取材先の確認と最終承認の記録が残っているか
短いお客様の声をアンケートから掲載する場合も、考え方は同じです。回答者の了承を得たものだけを使い、AIに整えてもらう場合も、意味を変えない範囲の誤字修正や要約にとどめます。
事例が集まらないときの代わりの見せ方
取引先の事情で社名を出せない、取材に応じてもらえるお客様がまだいない、ということもあります。その場合でも、架空の事例で埋めるのではなく、事実だけで信頼を伝える方法を考えましょう。
- 匿名の事例にする:お客様の了承を得たうえで、社名を伏せ「従業員20名ほどの小売業の場合」のように業種と規模だけを示します。匿名でも、内容は実際の事例に限ります。
- 仕事の進め方を見せる:相談から納品までの流れ、打ち合わせで確認すること、成果物の例などを紹介すると、依頼後の姿を想像してもらえます。
- 担当者を紹介する:誰が対応するのか、どんな経験を持つ人なのかを伝えるのも、安心材料になります。
- 仮定の例と明記して説明する:「例えば、こういう課題がある場合は、このように進めます」と、実例ではないことがわかる形で書きます。
最後の方法を使う場合は、読者が実際の事例と誤解しないよう、見出しや本文で「想定例」であることをはっきり示してください。事例は、数が少なくても本物であることに価値があります。
まとめ
導入事例やお客様の声のページで、AIに架空の声を作らせることは避けなければなりません。AIは、取材の質問づくり、文字起こしの整理、確認済みの要点からの下書きといった「実際に聞いた内容を整える」作業に使い、内容そのものはお客様への取材と確認によって作ります。
まずは、事例として紹介したいお客様を3社ほど書き出し、それぞれ「読者に近い課題を持っていたか」「取材をお願いできる関係か」を確認してみてください。1社に絞れたら、掲載条件を添えた取材依頼の文面を用意するところから始めましょう。