AIの文章を「自社の言葉」に直す編集術|固有の情報を足す5つの視点
AIが書いた文章は整っているのに、どの会社にも当てはまる印象になりがちです。具体例、判断の理由、現場の言葉など、自社にしかない情報を足して「自社の言葉」に直す編集のコツを解説します。
AIに書かせたサービス紹介を読み返して、「間違ってはいないけれど、うちの会社の文章という気がしない」と感じたことはないでしょうか。社名を競合他社に差し替えても通じてしまう文章は、読者の印象に残らず、問い合わせにもつながりにくくなります。
AIは大量の文章から学んだ「よくある書き方」を出力するのが得意なため、何も手を加えなければ、平均的で無難な文章になります。これはAIの欠点というより性質です。自社らしさは、AIの出力に人が固有の情報を足し、言葉を選び直す編集の工程で生まれます。
この記事では、AIの文章を「自社の言葉」に直すための編集の視点と、実際の進め方を解説します。言い回しのクセを直す技術的な方法は別の記事で扱うので、ここでは「中身を自社のものにする」編集に絞ってお伝えします。
なぜAIの文章は「どこの会社でも言える」になるのか
AIに「当社の強みを書いて」と頼むと、「丁寧な対応」「確かな品質」「豊富な実績」といった言葉が並びがちです。これらは、AIが自社について知っている情報が少ないため、どの会社にも当てはまる言葉で空白を埋めた結果です。
つまり、文章が平凡になる原因の多くは、文章力ではなく情報不足にあります。読者が「この会社に頼みたい」と思うのは、抽象的な強みではなく、その強みを裏づける具体的な事実やエピソードを読んだときです。編集でやるべきことは、言い回しを飾ることではなく、抽象的な言葉を自社の事実に置き換えることだと考えましょう。
自社の言葉に直す5つの視点
AIの原稿を読みながら、次の5つの視点で「自社にしか書けない情報」を足していきます。
| 視点 | AIが書きがちな文 | 直した例(仮の会社の場合) |
|---|---|---|
| 1. 具体的な場面 | お客様に寄り添った対応をします | 初回の打ち合わせでは、図面を広げる前に、今の作業場の困りごとを30分ほど伺います |
| 2. 判断の理由 | 品質にこだわっています | 納期を優先して検品を省くことはしません。そのため、繁忙期は受注数を絞っています |
| 3. やらないこと | 幅広いニーズに対応します | 住宅の新築は手がけず、店舗の改装に絞っています |
| 4. 現場の言葉 | スムーズな進行を心がけています | 職人と営業が同じ現場に毎回立ち会う「二人担当」で進めます |
| 5. 数字と条件 | 迅速に対応します | 平日のお問い合わせには、目安として翌営業日までに担当者からご連絡します |
1. 具体的な場面を足す
「寄り添う」「丁寧」といった言葉は、実際に何をしているかの場面に置き換えます。誰が、いつ、何をするのかが見えると、読者は自分が依頼したときの様子を想像できます。
2. 判断の理由を足す
「こだわり」は、何かを優先するために何かを諦めている、という判断の形で書くと説得力が増します。理由まで書くと、価値観が伝わります。
3. やらないことを書く
AIは「幅広く対応」と書きたがりますが、得意分野を絞って示すほうが、合う顧客に選ばれやすくなります。対応しない範囲を明記することは、ミスマッチの問い合わせを減らす効果もあります。
4. 現場の言葉を使う
社内で実際に使われている呼び名や仕組みの名前は、その会社らしさが最も出る部分です。ただし、外部の人に意味が伝わらない言葉は、一言説明を添えましょう。
5. 数字と条件を入れる
「迅速」「多数」は、確認できる数字や条件に置き換えます。数字を使う場合は、社内の記録で裏づけが取れるものに限り、変動するものは「目安」と明記します。
編集を進める手順
5つの視点を使って、次の順番で編集すると効率的です。
- 抽象語に印をつける:原稿を読み、「丁寧」「最適」「高品質」など、他社でも言える言葉に印をつけます。
- 社内に質問する:印をつけた言葉ごとに「具体的には何をしているか」を現場の担当者に聞きます。
- 答えを素材としてAIに渡す:集めた答えを渡し、該当箇所を書き直してもらいます。
- 人が読み比べる:書き直した文が、社内の実態と一致しているかを担当者に確認します。
- 削る:具体的な裏づけが見つからなかった強みは、無理に残さず削ります。
最後の「削る」は特に大切です。裏づけのない強みを残すと、読者にとって根拠のない宣伝文句になり、場合によっては表示のルールに抵触するおそれもあります。
社内への質問とAIへの依頼の例
現場に聞くときは、答えやすい具体的な質問にするのがコツです。
- 「お客様から『頼んでよかった』と言われたのは、どんな場面でしたか」
- 「他社ならやるけれど、うちはやらないと決めていることはありますか」
- 「新人に最初に教える、仕事の進め方のルールは何ですか」
- 「社内でよく使うけれど、社外の人には通じない言葉はありますか」
集めた答えをAIに渡すときは、次のように頼みます。
- 「以下の原稿の、【】で囲んだ抽象的な表現を、社内ヒアリングのメモにある具体的な事実に置き換えてください。メモにない内容は追加せず、置き換えられない箇所はそのまま残して『根拠なし』と注記してください」
「根拠なし」と注記させることで、削るべき箇所が自然に浮かび上がります。
自社の言葉に直すときの注意点
具体的な情報を足す編集は効果が大きい反面、気をつけたい点もあります。編集後の原稿を、次のチェックリストで見直してください。
- 足したエピソードは、特定のお客様が推測できる書き方になっていないか
- 数字や期間は、社内の記録で確認できるものか。変わりやすいものに「目安」と添えているか
- 現場の言葉に、社外の人向けの説明が添えられているか
- 一部の担当者だけの取り組みを、会社全体の方針のように書いていないか
- 具体例を足した結果、文章が長くなりすぎて要点が埋もれていないか
特に最後の点は見落としがちです。具体例は1つの主張につき1つあれば十分なことが多く、詰め込みすぎると読者は何が強みなのかを見失います。最も伝わる例を1つ選び、他は別のページや事例紹介に回すと、全体が読みやすくなります。
まとめ
AIの文章が「どこの会社でも言える」内容になるのは、AIが自社について知っている情報が少ないからです。具体的な場面、判断の理由、やらないこと、現場の言葉、数字と条件という5つの視点で固有の情報を足し、裏づけのない強みは削ることで、文章は自社の言葉に変わっていきます。
まずは、自社サイトのトップページかサービス紹介ページを開き、他社でも言える言葉に印をつけてみてください。そのうえで、印をつけた言葉ごとに現場の担当者へ「具体的には?」と一つずつ聞くことから始めましょう。