AI活用制作と従来の制作は何が違う?|進め方・体制・向き不向きを比較
AIを活用したWeb制作と従来型の制作では、進め方や社内に求められる関わり方が異なります。両者の違いを比較表で整理し、自社にはどちらの進め方が合うのかを判断するための視点を紹介します。
制作会社の提案書に「AI活用」と書かれていたり、社内で「AIを使えば自分たちで作れるのでは」という話が出たりして、従来の制作と何が違うのか分からず判断に迷っている担当者は多いのではないでしょうか。
AIを活用した制作は、単に「同じことを速くやる」ものではありません。進め方の順番、社内の関わり方、成果物の確認方法が少しずつ変わります。この違いを理解しないまま進めると、「思ったより社内の負担が大きい」「確認が追いつかない」といったずれが生まれます。
この記事では、AI活用制作と従来型の制作の違いを比較し、自社に合う進め方を選ぶための視点を整理します。費用の具体的な比較は扱わず、進め方と体制の違いに絞って解説します。
従来型の制作の流れをおさらい
従来型のWeb制作は、工程を順番に積み上げていく進め方が一般的でした。ヒアリングで要件を固め、構成案、ワイヤーフレーム(ページの骨組みを線と箱で示した設計図)、デザイン、コーディングと進み、各段階で発注側が確認して次へ進みます。
この進め方の利点は、各工程の成果物が明確で、確認ポイントが分かりやすいことです。一方で、後半になってから「イメージと違う」と気づくと、前の工程まで戻る大きな手戻りが発生しやすいという弱点がありました。完成形が見えるのが遅いため、発注側が判断しにくい場面も多くありました。
AI活用制作は「早く形にして直す」進め方
AIを活用した制作では、早い段階で完成形に近いたたき台を作り、それを見ながら修正を重ねる進め方が取りやすくなります。例えば、ヒアリング直後に構成・原稿・デザインの仮案をまとめて作り、実際の画面に近いものを見ながら方向性を決める、といった形です。
この進め方は、プロトタイプ(試作品)を作って検証するやり方に近く、「見てから決める」ことができるのが大きな利点です。発注側にとっても、抽象的な説明より具体的な画面を見たほうが、好みや違和感を伝えやすくなります。
ただし、たたき台がすぐに出てくる分、確認と判断の回数が増えます。発注側が早いペースで意見を返せないと、AIのスピードを活かしきれません。
もうひとつ注意したいのが、内容の画一化です。AIは多くの情報から「よくある表現」を組み立てるのが得意なため、指示や材料が少ないと、他社と似たような見出しや言い回しが並びがちです。従来型の制作では担当者の経験や取材がその会社らしさを生み出していましたが、AI活用制作では、発注側が渡す一次情報と、人による編集がその役割を担います。
例えば「品質にこだわります」という一般的な文言を、「出荷前に全品を2名で目視検査しています」のような具体的な事実に置き換えられるかどうかは、材料を持っている発注側の関わり方次第です。
比較表で見る主な違い
両者の違いを、制作を進めるうえで影響の大きい項目ごとに整理します。なお、実際にはAIを一部の工程だけで使う「中間型」の進め方も多く、明確に二分されるものではありません。
| 項目 | 従来型の制作 | AI活用制作 |
|---|---|---|
| 進め方 | 工程を順番に確定させて進む | 仮の完成形を早く作り、修正を重ねる |
| 完成イメージが見える時期 | デザイン工程以降 | 初期段階から仮の画面で確認できる |
| 発注側の関わり方 | 節目ごとの確認が中心 | 短い間隔での確認・判断が増える |
| 原稿の用意 | 発注側またはライターが執筆 | AI下書きに発注側が事実と固有情報を足す |
| 案の数 | 工数上、1〜2案が中心 | 複数案を比較しやすい |
| 品質を左右する要素 | 担当者のスキルと経験 | 材料の質、指示の具体性、人による確認 |
| 起きやすい失敗 | 後半での大きな手戻り | 確認不足のまま公開、内容の画一化 |
表の通り、AI活用制作では「発注側の関わり方」と「確認の重要性」が大きく変わります。AIを使うから楽になる、とは限らない点に注意が必要です。
どちらが向いているかの判断ポイント
どちらの進め方が優れているというより、自社の状況に合うかどうかで選ぶのが現実的です。次のチェックリストで、当てはまる項目が多いほうを目安にしてください。
AI活用制作が向いている状況
- 社内にサイトの内容を判断できる担当者がいて、週に数回は確認の時間を取れる
- 実績・顧客の声・営業資料など、AIに渡せる自社の材料がある程度そろっている
- 公開後も自分たちで更新しながら改善していきたい
- 小さく始めて、反応を見ながらページを増やしたい
従来型の進め方が向いている状況
- 社内の確認担当者が忙しく、まとまった節目でしか判断できない
- ブランドの世界観を作り込みたく、デザインの独自性を最優先したい
- 複雑な機能や外部システムとの連携が多い
- 社内承認の段階が多く、確定した成果物単位で決裁を取る必要がある
多くの場合、両方の要素を組み合わせることになります。例えば、構成と原稿の下書きはAIで素早く作り、デザインはプロが作り込む、といった分け方です。内製する場合も、更新頻度の高いお知らせやブログはAIを使って社内で回し、トップページなど重要なページだけ専門家に依頼する、という組み合わせが考えられます。
どちらの進め方でも変わらないこと
進め方が違っても、良いサイトの条件は変わりません。誰に何を伝えるかが明確であること、情報が正確であること、使いやすいことです。AIを活用した場合も、出力をそのまま公開せず、人が事実確認と編集を行うことが前提です。
また、制作会社に依頼する場合は、どの工程でAIを使い、誰がどのように確認するのかを事前に聞いておくと安心です。次のような質問が役立ちます。
- どの工程でAIを使う予定ですか
- AIが作った原稿や画像は、誰がどのように確認しますか
- 当社側で用意すべき材料と、確認のタイミングはいつですか
- 公開後に当社で更新するとき、AIをどう使えばよいか教えてもらえますか
まとめ
従来型の制作は工程を順番に確定させて進めるのに対し、AI活用制作は早く仮の完成形を作り、見ながら直していく進め方です。後者は手戻りを減らしやすい反面、発注側の確認と判断の回数が増え、材料の質と人による確認が品質を左右します。
まずはこの記事のチェックリストで自社の状況を確認し、確認担当者がどれくらい時間を取れるか、渡せる材料がどれだけあるかを洗い出してみてください。それが、進め方を選ぶいちばん確かな判断材料になります。