発注者のためのデザインフィードバックのコツ|「なんか違う」を伝わる言葉にする
デザイン案を見て違和感はあるのに、うまく言葉にできない。そんな発注者向けに、感想を具体的な修正依頼に変える考え方と伝え方の型、AIで言語化を補助する方法、避けたいNG例を解説します。
制作会社からデザイン案が届き、見た瞬間に「何か違う」と感じたものの、どこがどう違うのかを説明できない。結局「もう少しいい感じに」とだけ伝えて、次の案もやはり違う。発注者の立場でこのような経験をした方は多いのではないでしょうか。
デザインのやり直しが何度も続く原因は、デザイナーの力量だけでなく、フィードバック(デザイン案に対する感想や修正依頼)の伝え方にあることも少なくありません。デザイナーは、伝えられた言葉を手がかりに修正の方向を決めるため、曖昧な言葉からは推測で修正するしかないからです。
この記事では、デザインの専門知識がない発注者でも、違和感を伝わる言葉に変えられる考え方と伝え方の型、AIを使った言語化の補助、避けたい伝え方を紹介します。
良いフィードバックは「感想」ではなく「目的とのずれ」を伝える
フィードバックで最も大切なのは、自分の好みではなく、サイトの目的や事前に決めたトンマナ(デザインの方向性)とのずれを伝えることです。
例えば「この青は好きではない」という感想は、デザイナーにとって判断が難しい言葉です。好みは人によって違い、別の色にしても再び好みに合わない可能性があるからです。一方、「目指している『親しみやすさ』に対して、この濃い青は少し冷たく堅い印象に感じる」と伝えれば、デザイナーは目的に沿った修正を考えられます。
もちろん、発注者の直感的な違和感には価値があります。大切なのは、直感を捨てるのではなく、「なぜそう感じたのか」を目的に結びつけて言葉にすることです。
違和感を言葉にする伝え方の型
フィードバックは、次の4つの要素をそろえると伝わりやすくなります。
- 場所:どのページの、どの部分か(スクリーンショットに印をつけると確実です)
- 受けた印象:見たときにどう感じたか
- 理由:目的やトンマナ、読者の立場から見て、なぜそれが問題か
- 期待する状態:どうなっていれば良いと思うか(具体的な解決策ではなく、目指す状態)
4つ目で「ボタンを赤にしてください」と解決策を指定するより、「問い合わせボタンが周りに埋もれず、すぐ目に入る状態にしたい」と目指す状態を伝える方が、デザイナーの専門性を生かした提案を引き出せます。ただし、ロゴの色など決まっている事項は、はっきり指定して構いません。
言い換えの例
| 伝わりにくい言い方 | 伝わりやすい言い方 |
|---|---|
| なんか違う | トップの写真から、目指している「身近さ」より「高級感」を強く感じる。初めての相談者が気後れしないか心配 |
| もっとインパクトがほしい | ファーストビューで当社の一番の強みである「短納期」が伝わらない。最初に目に入る位置に置きたい |
| ごちゃごちゃしている | サービス紹介のセクションで、見出し・文章・アイコン・ボタンが同じくらい目立っていて、どこから読めばよいか迷う |
| 地味 | 全体の落ち着きは良いが、問い合わせボタンが背景になじみすぎて見つけにくい |
| おしゃれにしてほしい | 参考サイトAのように、余白を広く取り、写真を大きく見せる雰囲気に近づけたい |
伝える形式とタイミング
フィードバックは、口頭だけで済ませず、文章や画像に印をつけた資料として残すのがおすすめです。口頭で伝えた内容は、言った側と聞いた側で記憶が食い違いやすく、後から「そんな話はしていない」という行き違いの原因になります。
一方で、文章だけでは温度感が伝わりにくいこともあります。初回のデザイン案のように方向性を大きく左右する場面では、短いオンライン会議で画面を見ながら話し、その内容を文章でまとめ直すと、誤解が少なくなります。返信までの期間も、あらかじめ「受け取ってから3営業日以内に社内の意見をまとめて返す」など目安を決めておくと、スケジュールが崩れにくくなります。
AIで違和感の言語化を補助する
違和感をどうしても言葉にできないときは、生成AIを壁打ち相手にする方法があります。自分の感覚を整理するための補助として使うのがポイントです。
- 「Webサイトのデザイン案を見て『何か違う』と感じています。目指している印象は『誠実』『明快』『身近』です。違和感の原因を言葉にするために、私に質問を5つしてください。」
- 「以下は私がデザイン案について書いたメモです。感想と事実を分け、デザイナーに伝えるフィードバックとして『場所・受けた印象・理由・期待する状態』の形に整理してください。私が書いていない内容は付け足さないでください。」
1つ目のように、AIに質問してもらう使い方は特に効果的です。質問に答えていくうちに、自分が引っかかっていた点が見えてきます。一方、AIにデザイン案の良し悪しを判断させ、その結論をそのまま伝えるのは避けましょう。フィードバックは発注者自身の判断として伝えることが、信頼関係の土台になります。
避けたい伝え方と、やり取りを円滑にするコツ
次のような伝え方は、やり直しを増やしたり、関係をぎくしゃくさせたりする原因になります。
- 関係者の意見をそのまま全部転送する:社内で意見が食い違ったまま伝えると、デザイナーはどれに従えばよいか分かりません。社内で一本化してから伝えます。
- 修正のたびに新しい要望を足す:前回の指摘と関係のない要望が毎回加わると、終わりが見えなくなります。要望は最初の確認でできるだけ出し切ります。
- 決裁者が最後に登場する:細部まで詰めた後で決裁者が全体をひっくり返すと、大きな手戻りになります。最初の案の段階で決裁者にも見てもらいます。
- 良い点を伝えない:残したい部分を伝えないと、修正で良い部分まで変わってしまうことがあります。「この写真の使い方は良いので残してほしい」と具体的に伝えましょう。
また、修正回数の上限や、どの段階で何を確定させるかは、契約や見積もりの条件に関わることがあります。事前に制作会社と確認しておくと、安心してフィードバックできます。
まとめ
良いデザインフィードバックとは、好みの感想ではなく、目的やトンマナとのずれを、場所・受けた印象・理由・期待する状態の4点で伝えることです。言葉にならない違和感は、AIに質問してもらいながら整理し、最終的には自分たちの判断として伝えましょう。
次にデザイン案が届いたら、まず残したい良い点を3つ書き出し、そのうえで気になる点を4つの要素の形で書いてみてください。それを社内で一本化してから送るだけで、やり取りの回数は目に見えて変わるはずです。