制作会社とのサイト運用の分担|社内でやること・任せることの線引き
公開後の運用を制作会社にどこまで任せるか。AIで社内対応できる範囲が広がった今、作業ごとの分担の考え方、保守契約で確認すべき項目、うまく連携するための進め方を解説します。
サイトを公開したあと、運用を制作会社にどこまで任せるべきか。すべてを任せれば安心ですが、費用がかさみ、小さな修正にも時間がかかります。逆にすべてを社内で抱えると、担当者の負担が大きくなり、技術的なトラブルに対応できなくなるおそれがあります。
生成AIの普及によって、文章の作成や簡単な修正など、社内で対応できる作業の範囲は広がりました。だからこそ、改めて「何を社内で行い、何を制作会社に任せるか」を整理する価値があります。
この記事では、運用作業ごとの分担の考え方、保守契約で確認しておきたい項目、制作会社とうまく連携するためのコツを解説します。
分担を考えるための3つの基準
作業をどちらが担当するかは、次の3つの基準で考えると判断しやすくなります。
- 専門性:サーバーやプログラムの知識が必要か。失敗したときの影響がサイト全体に及ぶか。
- 頻度とスピード:どのくらいの頻度で発生し、どのくらい早く対応する必要があるか。
- 社内の知識:自社の商品、顧客、業界の事情など、社内の人のほうが詳しい情報が必要か。
専門性が高く失敗の影響が大きい作業は制作会社に、頻度が高くスピードが求められ、社内の知識が必要な作業は社内に、というのが基本的な考え方です。
作業ごとの分担の目安
一般的な中小企業のサイトを想定した、分担の目安を表にまとめました。自社の体制に合わせて調整してください。
| 作業 | 社内 | 制作会社 | 補足 |
|---|---|---|---|
| お知らせ・ブログの更新 | 主担当 | 必要に応じて相談 | AIで下書きし、社内で確認して公開 |
| 既存ページの文言修正・画像差し替え | 主担当 | 操作方法の支援 | CMSの操作手順書があると安心 |
| アクセス解析と月次の振り返り | 主担当 | 分析の助言 | 数値の解釈は社内の事情を知る人が適任 |
| 改善案の立案 | 共同 | 共同 | 社内の顧客理解と制作会社の専門知識を組み合わせる |
| 新規ページの制作・デザイン変更 | 内容の準備 | 主担当 | 原稿や素材は社内で用意すると早い |
| CMS・プラグインの更新 | 確認 | 主担当 | 更新後の動作確認は社内でも行う |
| バックアップと復元 | 確認 | 主担当 | 取得状況の報告を受ける |
| サーバー・ドメイン管理 | 契約情報の把握 | 主担当 | 契約の名義と更新日は社内でも把握する |
| 障害・改ざんなどの緊急対応 | 連絡・判断 | 主担当 | 連絡方法を事前に決めておく |
ポイントは、制作会社に任せる作業であっても、社内で「把握」と「確認」の役割を持つことです。ドメインやサーバーの契約情報を制作会社だけが知っている状態は、契約の見直しや乗り換えのときに大きな問題になります。
保守契約で確認しておきたい項目
制作会社と保守契約を結ぶ、または見直す際は、次の項目を確認しましょう。あいまいなまま契約すると、「それは契約外です」というすれ違いが起きやすくなります。
- 作業範囲:月額費用に含まれる作業と、別料金になる作業の区別
- 対応時間と連絡方法:営業時間、問い合わせの窓口、返答までの目安
- 緊急時の対応:サイトが表示されない場合などの連絡手段と対応の流れ
- 定期作業の内容:更新、バックアップ、動作確認などの頻度
- 作業報告:何をいつ実施したかの報告方法と頻度
- アカウントと権限:管理画面、サーバー、ドメインの名義と、社内で保持する権限
- 契約終了時の扱い:データや各種アカウントの引き渡し方法
契約書の内容で判断に迷う点がある場合は、専門家に確認することをおすすめします。また、料金の相場は作業範囲によって大きく異なるため、内容と費用のバランスで検討してください。
制作会社とうまく連携するためのコツ
社内の窓口を一本化する
複数の部署から制作会社へ直接依頼が届くと、優先順位がわからず、作業が重複したり矛盾したりします。社内で依頼をとりまとめる窓口を1人決め、依頼はすべて窓口を通す形にしましょう。窓口が不在のときの代理も決めておくと安心です。
依頼内容を具体的に伝える
「トップページをもう少し見やすくしてほしい」のようなあいまいな依頼は、やり取りの回数が増え、時間も費用もかかります。対象のページ、変更したい箇所、変更の理由、希望の期限を整理して伝えましょう。AIに「以下の要望を、制作会社への依頼文として、対象・内容・理由・期限がわかるように整理してください」と頼めば、依頼文の下書きが作れます。送る前に内容が正確かを確認してください。
社内でAIを使っていることを共有する
AIで作った文章やデザイン案を制作会社に渡す場合は、そのことを伝えておくと、確認の観点を共有できます。著作権などの扱いについて制作会社の方針がある場合もあるため、事前に話し合っておくと安心です。個別の判断が必要な場合は専門家に確認してください。
定期的に振り返りの場を持つ
月に1回や四半期に1回程度、制作会社と運用状況を振り返る場を設けると、改善の提案を受けやすくなります。アクセスの推移や社内での更新状況を共有し、次に取り組むことを一緒に決めていきます。
分担を見直すべきサイン
一度決めた分担も、社内の体制や事業の変化に合わせて見直しが必要です。次のような状況が続いている場合は、分担を見直すタイミングと考えてください。
- 小さな修正の依頼が多く、公開までに毎回数日以上かかっている
- 保守費用を払っているのに、どんな作業が行われているかわからない
- 社内で更新できるようになったのに、契約の作業範囲が以前のままになっている
- 社内の担当者が技術的なトラブル対応に追われ、本来の更新や改善が進んでいない
- 改善の提案がなく、サイトが公開時からほとんど変わっていない
見直しの際は、過去半年から1年分の依頼内容と作業報告を並べ、どの作業にどのくらいの時間と費用がかかっているかを確認します。AIに「以下の依頼履歴を、作業の種類ごとに分類し、件数を集計してください」と依頼すれば、整理の手間を減らせます。集計結果は必ず元のデータと照らし合わせて確認してから、制作会社との話し合いに使いましょう。
まとめ
制作会社とのサイト運用の分担は、専門性、頻度とスピード、社内の知識という3つの基準で考えると整理できます。日常の更新や分析は社内で、技術的な保守や緊急対応は制作会社で、という形が多くの中小企業にとって現実的です。ただし、任せる作業でも契約情報の把握と結果の確認は社内で行いましょう。
まずは、現在の保守契約書を取り出し、作業範囲と、ドメイン・サーバーの名義がどうなっているかを確認してください。この記事の表と見比べれば、見直すべき点が見つかるはずです。