生成AIでWebサイト制作は何が変わった?|スピード・役割・ボトルネックの変化
生成AIの普及で、Webサイト制作は「作業の速さ」よりも「決めることの質」が問われるようになりました。何が変わり、何が変わっていないのかを、制作を検討する担当者の目線で整理します。
「AIを使えばWebサイトはすぐに作れるらしい」と聞く一方で、実際に自社サイトをどう進めればよいのか分からない、という声は少なくありません。制作会社からの提案にもAIという言葉が増え、何が本当に変わったのかが見えにくくなっています。
結論から言うと、生成AIによって大きく変わったのは「手を動かす作業の速さ」と「試せる案の数」です。一方で、誰に何を伝えるサイトなのかを決めること、内容が正しいかを確かめることは、今も人の仕事として残っています。
この記事では、AI時代のWebサイト制作で何が変わり、何が変わっていないのかを整理し、これからサイトを作る・作り直す担当者が押さえておくべき考え方を解説します。
生成AIの登場で制作の「前提」が変わった
生成AIとは、文章・画像・コードなどを、人の指示(プロンプト)に応じて新しく作り出すAIのことです。ChatGPT、Claude、Geminiといった対話型のサービスが広く使われるようになり、Web制作の現場でも日常的な道具になりました。
従来のWeb制作では、構成案を作る、原稿を書く、デザインのラフを作る、HTMLやCSSを書く、といった作業のひとつひとつに専門スキルと時間が必要でした。そのため「作業できる人の時間」が、制作全体のスピードとコストを決める最大の要因でした。
生成AIが入ったことで、これらの作業の「たたき台」を短時間で用意できるようになりました。例えば、サイトマップの案を3パターン出す、トップページの見出し案を20個出す、といった作業は、目安として数分から数十分で終わります。作業そのものよりも、出てきた案から何を選び、どう直すかに時間を使う形へと重心が移っています。
変わったこと:スピード・試行回数・担い手
具体的に変わった点を3つに整理します。
1. 下書きまでのスピード
原稿、構成、コードの下書きが早く出せるようになりました。白紙から考える時間が減ったことで、初回の打ち合わせ時点で具体的なたたき台を見ながら議論できるようになっています。
2. 比較・検討できる案の数
以前は工数の関係で1〜2案しか出せなかったキャッチコピーやページ構成も、AIを使えば複数案を並べて比べられます。「AとBのどちらが顧客に伝わるか」を早い段階で検討できるのは大きな変化です。
3. 作業の担い手
ノーコードツール(プログラミングをせずに画面操作でサイトを作れるツール)と生成AIを組み合わせることで、社内の担当者が自分で更新や小規模なページ追加を行うケースが増えました。制作会社に任せる部分と社内で持つ部分を、以前より柔軟に分けられるようになっています。
変わっていないこと:目的・中身・責任
一方で、AIが登場しても変わらない部分があります。むしろ、ここが弱いと作業が速くなった分だけ「中身の薄いサイト」が早くできあがってしまいます。
- 目的を決めること:問い合わせを増やしたいのか、採用につなげたいのか、信頼を高めたいのか。ゴールはAIではなく自社が決めるものです。
- 自社ならではの情報:強み、実績、お客様の声、価格の考え方など、AIは自社の事実を知りません。材料を用意するのは人です。
- 事実確認と最終判断:AIはもっともらしい誤り(ハルシネーション)を書くことがあります。公開前に人が確認し、責任を持って公開する必要があります。
- 読み手への配慮:表現が誤解を招かないか、ブランドのトーンに合っているかといった判断も人の役割です。
AIの出力はあくまで下書きです。そのまま公開するのではなく、人が確認・編集してから公開するという前提は、どの工程でも変わりません。
また、Webサイトが「会社の顔」であることも変わりません。訪問者は、文章の言い回しや写真の選び方、情報の新しさから、その会社が信頼できるかどうかを判断します。AIで作ったかどうかに関係なく、読み手にとって役に立ち、正確で、きちんと手入れされたサイトが評価されるという原則は、これまでと同じです。
ボトルネックは「作業」から「意思決定」へ
作業が速くなった結果、制作が止まる場所が変わりました。以前は「デザイナーの手が空かない」「原稿が書けない」といった作業待ちが典型的な遅れの原因でした。現在は、次のような意思決定の待ちが遅れの原因になりやすくなっています。
| 項目 | 従来よく起きていた遅れ | AI活用後に起きやすい遅れ |
|---|---|---|
| 構成 | 構成案の作成待ち | 複数案からどれを選ぶか決まらない |
| 原稿 | ライターの執筆待ち | 事実確認・社内承認が終わらない |
| デザイン | ラフ作成待ち | 好みが分かれて方向性が決まらない |
| 素材 | 撮影・素材集め待ち | 自社の実績や写真が用意できない |
つまり、AIを活用した制作をうまく進めるには、社内で「誰が何を決めるか」「何を基準に選ぶか」をあらかじめ決めておくことが、以前にも増して重要になっています。例えば、デザインの方向性は「ターゲット顧客が安心できるか」で選ぶ、原稿は「営業担当が普段説明している内容と一致しているか」で確認する、といった判断基準を先に共有しておくと、案が増えても迷いにくくなります。
担当者が今から意識したい3つのこと
これからサイトを作る・作り直す担当者に向けて、まず意識しておきたいことを手順としてまとめます。
- 目的と読者を一文で言えるようにする:「〇〇に悩む△△に、□□を知ってもらい問い合わせにつなげる」のように書き出してみます。AIに指示を出すときの土台にもなります。
- 自社の一次情報を集めておく:実績、よくある質問、営業でよく話す内容、お客様の声などをメモやファイルにまとめます。AIに渡す材料が多いほど、出力の質は上がります。
- 確認と決定の担当者を決める:内容の正確さを誰が確認し、最終的に誰が公開を決めるのかを決めておきます。
AIへの最初の指示としては、例えば「当社は〇〇業で、主な顧客は△△です。新しいWebサイトの目的は□□です。この前提で、必要なページ構成の案を3パターン、それぞれの狙いとあわせて提案してください」のように、前提を具体的に伝えるのが基本です。
まとめ
生成AIによって、Webサイト制作は下書きまでのスピードと、比較できる案の数が大きく変わりました。一方で、目的を決めること、自社ならではの情報を用意すること、事実を確認して責任を持って公開することは、今も人の仕事です。
まずは、自社サイトの目的と読者を一文で書き出し、手元にある実績や顧客の声を一か所に集めるところから始めてみてください。そのうえで、工程ごとにAIに任せる部分と人が担う部分を整理していくと、AIを活かした制作の進め方が具体的に見えてきます。