オウンドメディアをAIで立ち上げる考え方|量より「自社にしか書けない」記事を
AIを使えば記事は簡単に量産できますが、オウンドメディアの価値は記事の数ではなく、読者の役に立つ自社ならではの情報にあります。企画・執筆・編集の各段階でのAI活用の考え方と編集ルールの作り方を解説します。
自社の専門知識を発信して見込み客との接点をつくるオウンドメディアは、中小企業にとっても有効な手段です。しかし、「記事を書く時間がない」「何を書けばいいか分からない」という理由で、立ち上げたものの更新が止まってしまうケースは少なくありません。
生成AIの登場で、記事の下書きは短時間で作れるようになりました。一方で、AIに任せて記事を大量に公開すれば成果が出る、というわけではありません。むしろ、どこかで読んだような一般論の記事ばかりが並ぶメディアは、読者にも信頼されにくくなります。
この記事では、オウンドメディアの目的を確認したうえで、企画・執筆・編集の各段階でのAI活用の考え方、継続するための編集ルールの作り方を解説します。検索対策の詳しい方法は別の記事に譲り、ここでは記事づくりの基本的な考え方に絞ります。
オウンドメディアの目的を先に決める
オウンドメディアとは、自社が保有し運営する情報発信の場のことで、ここでは主に自社サイト内のブログやコラムを指します。AIを使い始める前に、まず「何のためのメディアか」をはっきりさせることが大切です。
- 見込み客の疑問に答え、問い合わせや資料請求につなげたい
- 既存顧客に役立つ情報を届け、関係を深めたい
- 専門性を示し、業界内での信頼を高めたい
- 採用候補者に会社の考え方や仕事の中身を知ってもらいたい
目的によって、書くべきテーマや読者が変わります。目的があいまいなままAIで記事を作ると、テーマがばらばらになり、誰に向けたメディアなのか分からなくなってしまいます。
企画・執筆・編集でのAIの役割分担
オウンドメディアの記事づくりは、大きく企画、執筆、編集の3段階に分けられます。それぞれでのAIと人の分担を整理しました。
| 段階 | AIに任せやすいこと | 人が担うこと |
|---|---|---|
| 企画 | 読者の疑問の洗い出し、テーマ案の一覧化、構成案の作成 | 目的に合うテーマの選定、自社が書く意味の判断 |
| 執筆 | 構成に沿った下書き、取材メモの整理、言い換え | 一次情報(経験・事例・現場の知見)の提供 |
| 編集 | 誤字脱字・表記ゆれのチェック、要約、タイトル案 | 事実確認、表現の判断、公開の決定 |
ポイントは、執筆段階で人が提供する「一次情報」です。一次情報とは、自社が実際に経験したこと、現場で見聞きしたこと、自社で確認したデータなど、他では手に入らない情報のことです。AIは一般的な知識をまとめることは得意ですが、一次情報を生み出すことはできません。同じテーマの記事でも、自社の事例がひとつ入るだけで、読者にとっての価値は大きく変わります。
「自社にしか書けない記事」をAIで作る手順
一般論ではなく、自社の知見が入った記事を効率よく作るための手順を紹介します。
- 読者の疑問を集める:営業や問い合わせ対応で実際に聞かれた質問を、担当者からメモで集めます。AIに想定される疑問を追加で挙げてもらうのも有効です。
- 社内の詳しい人に話を聞く:テーマについて最も詳しい社員に15〜30分程度話を聞き、録音して文字起こしをします。
- AIで構成と下書きを作る:文字起こしをAIに渡し、記事の構成と下書きを作ってもらいます。
- 編集担当が事実と表現を確認する:数字、固有名詞、制度に関する記述を確認し、読者に伝わる表現に整えます。
- 話をした社員に最終確認してもらう:専門的な内容に誤りがないかを確認してもらいます。
手順3のプロンプト例は次のとおりです。
- 「以下は、当社の施工担当者に『外壁塗装の時期の見極め方』について聞いた話の文字起こしです。住宅の持ち主向けのコラム記事として、見出しを含む構成案と2,000字程度の下書きを作ってください。担当者が話した具体的な経験や判断基準を中心にし、話していない内容は加えないでください」
この手順なら、社員が文章を書く負担は大きく減り、それでいて記事の中身は自社の知見に基づいたものになります。
量産に走らないための編集ルール
AIを使うと記事を作るハードルが下がるため、つい本数を増やすことが目的になりがちです。しかし、内容の薄い記事を大量に公開すると、読者の信頼を損ねるだけでなく、検索エンジンのスパムポリシーの対象になり得るとGoogleも示しています。次のような編集ルールを決めておきましょう。
- すべての記事に、自社の経験・事例・見解のいずれかを最低1つ入れる
- AIの下書きは必ず編集担当が読み、事実確認をしてから公開する
- 数字や制度に触れるときは、根拠となる情報源を確認する
- 他社の記事と似た内容になっていないか確認する
- 公開本数の目標より、読者の疑問にきちんと答えているかを優先する
- 古くなった記事は定期的に見直し、更新または非公開にする
このルールは文書にして、記事づくりに関わる全員で共有しておくと、担当者が変わっても品質を保ちやすくなります。
無理なく続けるための体制づくり
オウンドメディアの成果は、短期間ではなく、続けることで少しずつ現れるものです。立ち上げ時に意気込んで本数を増やしても、数か月で止まってしまっては意味がありません。AIで作業が軽くなった分、無理なく続けられる体制を最初に設計しておきましょう。
例えば、月に2本程度を目安に、「テーマ出し」「社員への聞き取り」「AIでの下書き」「編集と確認」「公開」の担当と締め切りを決めておく方法があります。一人の担当者に全工程を任せるより、聞き取りに協力する社員を部署ごとに決めておくほうが、話題の偏りも防げます。
また、テーマの候補は一覧にして管理し、AIで出した案と社内から集まった質問を同じ表にまとめておくと、次に何を書くかで迷う時間が減ります。公開した記事への問い合わせや社内の反応も同じ表に書き足していけば、読者に求められているテーマが少しずつ見えてきます。
まとめ
オウンドメディアでAIが役立つのは、読者の疑問の洗い出し、構成づくり、下書き、校正といった作業の部分です。メディアの価値を決めるのは、自社の経験や現場の知見といった一次情報であり、それを提供し、事実を確かめ、公開を判断するのは人の役割です。
まずは営業や問い合わせ対応の担当者に、最近お客様から聞かれた質問を5つ挙げてもらうところから始めてみてください。その質問の中に、自社にしか書けない記事のテーマが必ず含まれています。