AI活用で下がる費用・下がらない費用|制作費を見直すときの判断軸
「AIを使えばWeb制作はもっと安くなるはず」と考える前に知っておきたい、AI活用で下がりやすい費用と下がりにくい費用の違い、値下げ交渉より大切な考え方を解説します。
生成AIが広く使われるようになり、「AIで作れるなら制作費はもっと安くなるのでは」と感じている発注担当者は少なくありません。実際に、AIを取り入れて作業時間を短縮している制作会社も増えています。
ただし、すべての費用が同じように下がるわけではありません。AIが得意な作業と、人の判断や責任が欠かせない作業があり、後者の費用はほとんど変わらないのが実情です。この記事では、AI活用で下がりやすい費用と下がりにくい費用を整理し、見積もりを見直すときや社内で予算を説明するときの判断軸を紹介します。
AI活用で費用が下がる仕組み
Web制作の費用の大部分は、人が作業に使う時間(工数)で決まります。AIが下がらせるのは、この工数のうち「たたき台を作る」「繰り返しの作業をこなす」部分です。例えば、白紙から構成案を考えるのに半日かかっていた作業が、AIで複数案を出してから選んで直す形になれば、時間は短くなります。
一方、AIの出力は正しいとは限らず、そのまま公開することはできません。人が事実確認や修正をする時間、最終的に判断して責任を持つ時間は残ります。つまり、AIによる削減効果は「作業の下ごしらえ」に集中し、「判断と確認」にはあまり及ばない、と考えると理解しやすくなります。
削減効果が出やすい案件・出にくい案件
同じAI活用でも、案件の性質によって効果の大きさは変わります。目安として、次のような違いがあります。
- 効果が出やすい:ページ数が多く同じ型のページが続くサイト、既存原稿を整理し直すリニューアル、ブログやお知らせなど定型の更新が多いサイト
- 効果が出にくい:ブランドの世界観を一から作るサイト、取材や撮影が中心のサイト、関係部署が多く合意形成に時間がかかる案件、法令や業界ルールの確認が多い業種のサイト
例えば、従業員の少ない会社が10ページ程度のサイトを作る場合、もともと作業量が多くないため、AIで削れる時間も限られます。一方で、数十ページの製品紹介ページを同じ型で作るような案件では、たたき台づくりの効率化が全体の工数に効いてきます。自社の案件がどちらに近いかを把握しておくと、過度な期待を持たずに見積もりを読めます。
下がりやすい費用・下がりにくい費用の比較
工程ごとの傾向を表にまとめました。あくまで一般的な傾向であり、制作会社の体制や案件の内容によって変わる点に注意してください。
| 工程 | 下がりやすさ | 理由 |
|---|---|---|
| 原稿の下書き | 下がりやすい | 構成や文章のたたき台は短時間で作れる。ただし事実確認と自社らしい表現への修正は必要 |
| ワイヤーフレームのたたき台 | 下がりやすい | ページ構成の案出しが速くなる |
| 定型的なコーディング | やや下がりやすい | AIの支援で記述が速くなる。動作確認や品質チェックは人が行う |
| 画像素材・イメージ案 | やや下がりやすい | ラフ案は作りやすいが、権利確認や実写が必要な場面は残る |
| 目的整理・戦略設計 | 下がりにくい | 自社の事業や顧客の理解は、人との対話でしか深まらない |
| デザインの最終判断 | 下がりにくい | ブランドとの整合や細部の調整は人の判断に頼る |
| 進行管理・社内調整 | 下がりにくい | 関係者とのやり取りや合意形成は減らない |
| 品質確認・テスト | 下がりにくい | AIを使うほど、確認の重要性はむしろ高まる |
| 取材・撮影 | ほぼ変わらない | 現場に行き、人と話す作業は置き換えられない |
「安くなる」より「同じ予算でできることが増える」と考える
AI活用の効果は、単純な値下げとしてだけでなく、同じ予算の中で取り組める範囲が広がる形で現れることもあります。例えば、浮いた時間を競合サイトの調査、原稿の質の向上、公開前のテストの充実に回せば、サイトの成果につながりやすくなります。
反対に、極端な低価格をうたう提案には注意が必要です。AIで作った原稿や画像をほとんど確認せずに納品すると、事実と違う記載、他社と似通った表現、権利関係があいまいな素材などが混ざるおそれがあります。公開後に修正する手間やトラブル対応のほうが高くつくことも考えられます。価格の安さだけでなく、確認の工程がどれだけ含まれているかを合わせて比べることが大切です。
社内でAIを使って発注費を抑える方法
発注者側でもAIを使って準備することで、制作会社の工数を減らせる場合があります。例えば次のような作業です。
- 自社の強みや顧客の声を整理し、原稿の素材メモを作る
- 既存サイトの各ページの内容を要約し、残す情報と削る情報を決める
- よくある質問を社内の問い合わせ履歴から洗い出す
- 依頼内容を文章にまとめ、打ち合わせの回数を減らす
AIへの頼み方の例としては「次の箇条書きは当社の営業担当者が話した強みです。重複をまとめ、根拠となる事実が必要な項目には印をつけてください」のように、確認すべき点を明示させると役立ちます。社内の機密情報や個人情報をAIに入力しないよう、利用ルールも確認しておきましょう。
見積もりを見直すときの確認手順
AI活用を前提に見積もりを相談するときは、次の順で進めると話がかみ合いやすくなります。
- 見積書の各項目について、どの工程でAIを使っているかを質問する
- AIを使った部分の確認・修正を誰がどのように行うかを聞く
- 発注者側で用意できる素材や作業を伝え、制作会社の工数が減るかを相談する
- 削減できた分を値下げに回すか、品質向上や追加施策に回すかを決める
- 合意した内容を見積書や契約書の作業範囲に反映してもらう
単に「AIを使うなら安くしてほしい」と伝えるよりも、具体的な工程の話をしたほうが、制作会社も根拠のある見直し案を出しやすくなります。
また、AI活用による効率化は、制作会社にとってもツールの利用料や社内ルールの整備、スタッフの教育といった新たなコストを伴います。工数が減った分がそのまま値下げになるとは限らない点も理解しておくと、交渉が対立的にならずに済みます。お互いにとって無理のない落としどころを探す姿勢が、長く付き合える関係づくりにもつながります。
まとめ
AI活用で下がりやすいのは、原稿の下書きや構成案、定型的なコーディングなど「たたき台づくり」の費用です。一方で、目的整理、デザインの最終判断、進行管理、品質確認、取材・撮影などの費用は下がりにくく、AIを使うほど人による確認の価値は高まります。
次のステップとして、手元の見積書を上の表と照らし合わせ、どの項目が下がる余地があるのかを書き出してみましょう。そのうえで制作会社に工程ごとのAI活用状況を質問し、値下げと品質向上のどちらに充てるかを社内で決めておくと、納得感のある発注につながります。