生成AIに入力してよい情報・ダメな情報|個人情報と機密情報の線引き
サイト制作や更新で生成AIを使うとき、顧客情報や問い合わせ内容、未公開の企画を入力してよいのか。個人情報と機密情報の考え方、入力前の判断手順、安全な置き換え方を具体例で整理します。
問い合わせメールへの返信文をAIに作らせたい、お客様の声をもとに導入事例の原稿を作りたい、リニューアル前の新サービス情報からLPの構成を考えたい。Webサイトの仕事でAIを使う場面が増えるほど、「この情報をAIに入力して大丈夫だろうか」と迷う瞬間も増えていきます。
生成AIに入力した情報は、サービスの設定や契約によっては、提供事業者のサーバーに保存されたり、AIの改善に使われたりする可能性があります。一度入力した情報を取り消すのは簡単ではありません。この記事では、入力してよい情報とダメな情報の線引き、入力前の判断手順、情報を安全な形に置き換えるコツを解説します。個別のケースの法的な判断については、弁護士など専門家に確認してください。
なぜ入力する情報に注意が必要なのか
多くの生成AIサービスでは、入力内容(プロンプト)や出力結果が一定期間保存されます。また、個人向けの無料プランなどでは、初期設定で入力内容がAIの学習や品質改善に使われる場合があります。一方、法人向けプランやAPI(他のシステムからAIを呼び出す仕組み)では、学習に使わないことを明示しているサービスも一般的です。条件はサービスやプランごとに異なり、変更もされるため、2026年時点の一般的な情報として、最新の条件は各社の公式情報を確認してください。
個人情報保護委員会も、生成AIサービスの利用について注意喚起を公表しています。そこでは、個人情報を含むプロンプトを入力する場合、利用目的の範囲内かどうかを十分に確認することなどが示されています。つまり、法律の面でも、企業の信用の面でも、「何を入力するか」をあらかじめ決めておくことが重要です。
入力してよい情報・ダメな情報の目安
Web制作や運用の場面でよく扱う情報を、3つの区分で整理しました。自社の状況に合わせて調整して使ってください。
| 区分 | 情報の例 | 扱いの目安 |
|---|---|---|
| 入力してよい | すでに公開しているサイトの文章、公開済みのプレスリリース、一般的な業界知識、架空の例文 | 原則として入力可。ただし出力の確認は必要 |
| 条件付きで入力可 | 未公開の原稿、社内向けの企画書、アクセス解析の集計値、匿名化したお客様の声 | 学習に使われない設定・契約のツールで、社内ルールの範囲内で入力 |
| 入力しない | 氏名・メールアドレス・電話番号などの個人情報、問い合わせ内容の原文、顧客リスト、取引先との契約内容、パスワードやAPIキー、未発表の決算・人事情報 | 原則として入力しない。必要な場合は情報管理の責任者に相談 |
特に注意したいのは、パスワードやAPIキー、サーバーの接続情報です。サイトの不具合をAIに相談するとき、設定ファイルやエラーログをそのまま貼り付けると、これらが含まれていることがあります。貼り付ける前に、該当部分を削除するか「****」などに置き換えましょう。
入力前に確認する手順
迷ったときは、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
- その情報は、すでに社外に公開されているものか
- 個人を特定できる情報(氏名、連絡先、顔写真、他の情報と組み合わせて特定できるもの)が含まれていないか
- 取引先との契約や秘密保持契約(NDA)で、第三者への提供が制限されている情報ではないか
- 使おうとしているAIサービスは、会社が利用を認めたものか、学習に使われない設定になっているか
- 個人名や社名を伏せるなど、置き換えても目的を達成できないか
1で「公開済み」なら基本的に問題は少なく、2・3に当てはまる場合は原則として入力を避けます。4と5は、条件付きの情報を扱うときの最終確認です。
安全な形に置き換えるコツ
多くの場合、情報を少し加工するだけで、AIの力を借りながらリスクを下げられます。
固有名詞を置き換える
問い合わせへの返信文を作る場合は、相手の氏名や会社名を「A様」「B社」に置き換え、内容も要点だけを書きます。
- 置き換え前:「〇〇様(△△株式会社)から、3月10日に納品した見積もりの金額について問い合わせがありました」
- 置き換え後:「取引先の担当者から、見積もり金額の内訳について説明してほしいという問い合わせがありました。丁寧で簡潔な返信文の案を3つ作ってください」
お客様の声は要約・匿名化してから
導入事例やお客様の声の原稿を作るときは、インタビューの書き起こしをそのまま入れるのではなく、個人や会社が特定できる情報を除いた要約を入力します。そもそも掲載について本人の同意を得ているか、どの範囲まで掲載してよいかも、AIを使う前に確認しておきましょう。
数字は必要な粒度だけ
アクセス解析のデータを分析させる場合も、個々のユーザーを識別できるデータは入れず、ページ別の閲覧数や流入元別の割合など、集計済みの数字に限定します。
画面のスクリーンショットにも注意
管理画面やメールソフトの画面をスクリーンショットでAIに渡すと、画面の端に顧客の名前やメールアドレス、社内のファイル名などが写り込んでいることがあります。画像を入力する前に、必要な部分だけを切り抜くか、写り込んだ情報を塗りつぶしてから渡す習慣をつけましょう。
うっかり入力してしまったときの対応
注意していても、誤って入力してしまうことはあります。その場合は隠さずに報告できる仕組みが大切です。
- すぐに情報管理の責任者や上長に報告する
- サービスの機能で、該当する会話履歴を削除できるか確認する
- 入力した情報の種類、日時、サービス名を記録する
- 個人情報が含まれていた場合は、社内の手順に沿って対応を検討し、必要に応じて専門家に相談する
「報告したら叱られる」という雰囲気があると、問題が表に出にくくなります。報告しやすいルールにしておくことも、リスク対策の一部です。
まとめ
生成AIに入力する情報は、「公開済みなら原則可」「未公開の社内情報は認められたツールで条件付き」「個人情報・契約上の秘密・認証情報は原則不可」の3区分で考えると判断しやすくなります。迷ったら、固有名詞を置き換えたり要約したりして、目的を達成できないかを考えましょう。
まずは、社内で使っているAIサービスとプランを一覧にし、それぞれ入力内容が学習に使われる設定かどうかを確認してください。そのうえで上の表を自社向けに調整し、Web担当者や制作に関わるメンバーと共有しましょう。個人情報の扱いについて判断に迷う場合は、弁護士など専門家に確認することをおすすめします。